とんび

2017.01.27 社長日記

重松清氏の長編小説。

ここ最近、就寝前に少しずつ読んでいました。

心温まる、感動の一冊です。

「つらい時には、ここに帰ってくればいい」

昭和37年、ヤスさん、28歳の秋、長男のアキラが生まれた。

愛妻・美佐子さんと、わが子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」の温もりだった。しかし、その幸福は突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう。

わが子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと悲しみが痛いほどに伝わってきます。

「幼くして母親を失い、父親と共に生きてきた息子の話し」です。

熱血漢で、だけどどうにもうまく言葉で表せないヤスさん。

不器用で、周囲をハラハラさせる。

ウソと真実を携えて真っ直ぐに成長していくアキラ。

男の子であるから、成長期であるがゆえに過ちをおかし、

ぶつかり合いながらも、ココロでしっかりと支えあう父子。

そして、なんと言っても、それを見守る地域の人々の素晴らしさ。

登場人物のすべての人が、悲しいほどに優しい。

父子、二人っきりになってしまった家族だが、アキラが成長していく過程で様々な出来事が訪れます。

しかし、ヤスさんはアキラがいることで悲しみや苦しみを超える大きな幸せを感じるように。

やがてアキラが家族を持ち父親となっていき、立派に成長した息子と、屈託のない笑顔の孫に囲まれたヤスさんは、決してすべてが自分の望んだような人生ではないが、これまでの人生が最高だった、と振り返ることができたのです。

親が子に対して思う気持ち。「幸せになってほしい」

不器用だけど、芯の通った姿が印象的です。

母親がいなくても周りの人たちが子どもを愛し、育ててくれた。

子を見守る父親もまた、周りの人たちに支えれ育ててもらった。

「愛情」とは、こうして次の世代に受け継がれていく。

「故郷」ってのは「場所」だけでなく、時として「人」でもあるのかもしれない。